懲戒解雇 [ ちょうかいかいこ ]
用語解説
懲戒解雇とは
懲戒解雇とは、企業が就業規則に定める懲戒処分の中で最も重い処分として、労働者との雇用契約を一方的に解約することをいいます。横領・窃盗などの業務上の犯罪行為、重大なハラスメント、長期の無断欠勤、重要な業務命令への違反、経歴詐称などが典型的な対象事由です。懲戒解雇が有効となるには、①就業規則に根拠条文があること、②解雇権の濫用に当たらないこと(客観的合理的理由と社会通念上の相当性)、③適正な手続きを踏んでいること、という要件を満たす必要があります。通常の自己都合退職や普通解雇と異なり、失業保険の給付制限・退職金の不支給・転職への深刻な影響など、労働者側に多面的な不利益が生じる点が特徴です。
懲戒解雇されると失業保険(雇用保険)の給付はどうなるのか
懲戒解雇は、雇用保険法上「重責解雇」に該当する可能性があり、その場合は通常の自己都合退職よりもさらに不利な条件で失業給付を受けることになります。自己都合退職では原則2〜3か月の給付制限期間がありますが、重責解雇に認定されると給付制限が3か月に延長されるうえ、所定給付日数も自己都合退職と同水準(倒産・解雇など会社都合退職より大幅に少ない日数)に抑えられます。なお、懲戒解雇であっても雇用保険の被保険者要件(離職前2年間に通算12か月以上の被保険者期間)を満たしていれば、失業給付そのものが受けられなくなるわけではありません。
懲戒解雇による重責解雇認定がもたらすリスク
重責解雇と認定された場合、給付制限の延長・所定給付日数の減少という二重の不利益が生じます。会社都合退職(特定受給資格者)であれば給付制限なし・給付日数最大330日が適用されるケースがある一方、重責解雇では給付制限3か月・給付日数は自己都合と同等となります。また、ハローワークでの求職申込みが遅れると受給期間(原則1年間)が消費されるため、懲戒解雇後は速やかにハローワークへ行くことが重要です。さらに、離職票の離職理由欄に「重責解雇」と記載されることで、転職活動時に企業側に懲戒解雇の事実が伝わるリスクもあります。
重責解雇と通常解雇の失業保険給付の違い|実際のケース
たとえば勤続10年・45歳の正社員が業務上横領を理由に懲戒解雇された場合、重責解雇と認定されると所定給付日数は150日(会社都合であれば240日)となり、さらに3か月の給付制限が加わります。一方、同じ状況でも会社側の解雇手続きに重大な瑕疵があり「不当解雇」と判断されれば、会社都合相当として給付日数が回復する可能性があります。なお、懲戒解雇通知を受けた段階では重責解雇の最終的な認定はハローワークが行うため、離職票を受け取ったら早期に窓口で確認することが不可欠です。
懲戒解雇後に失業給付を適切に受けるための対処法
懲戒解雇後に失業給付を受けるには、まず会社から離職票を受け取り、ハローワークへ離職票を持参して求職申込みを行います。離職票の「離職理由」欄の記載内容に異議がある場合は、ハローワークの窓口で申し立てることが可能です。重責解雇認定に納得できない場合や、解雇の有効性自体を争う場合は、労働審判・裁判といった法的手続きを経て離職理由の変更を求めることもできます。また、解雇理由証明書を会社に請求し、解雇の根拠となる事実関係を書面で確認しておくことが、その後の対応において重要な証拠となります。離職後の生活を守る給付金の活用については、このメディアで詳しく解説しています。
懲戒解雇されると退職金はもらえないのか
懲戒解雇を受けた場合、退職金が支給されないケースが多いです。ただし、退職金の不支給は自動的に決まるわけではなく、就業規則または退職金規程に「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」もしくは「減額する」旨の規定が明記されていることが前提です。この規定がない場合、会社は原則として退職金を支払う義務を負います。また、規定があっても「懲戒解雇に至った非違行為の内容が、退職金全額を不支給とするほどの背信性を有するか」を裁判所が個別に判断するため、規定があれば必ず全額不支給になるとも限りません。
退職金不支給を受け入れてしまうリスク
退職金の不支給・減額は労働者にとって経済的打撃が非常に大きく、勤続年数が長いほど損失は膨らみます。会社が退職金規程を根拠に不支給を通告してきた場合でも、懲戒解雇の有効性に疑義がある限り、退職金請求権は消滅しません。「会社に言われたから仕方ない」と諦めてしまうと、本来受け取れるはずの金銭を失うリスクがあります。さらに、退職金不支給の判断が後に不当解雇と認定された場合、バックペイ(未払い賃金相当額)とともに退職金の支払いを求める余地が生じます。退職金規程の内容は、離職前に必ず書面で確認することが重要です。
退職金不支給・減額をめぐる裁判例のポイント
裁判例では、軽微な非違行為を理由にした退職金の全額不支給は「背信性が著しい」とはいえないとして無効と判断されたケースがあります。一方、業務上横領のような重大な背信行為については、退職金全額不支給を有効とした判例も存在します。退職金の一部支給(減額)を認めた事例もあり、非違行為の性質・金額・勤続年数・会社への貢献度などが総合的に判断されます。このように退職金の取り扱いは個々の事案によって結論が分かれるため、懲戒解雇と同時に退職金不支給を通知された場合は、専門家への相談が有効です。
懲戒解雇後の退職金を守るための対処法
退職金の不支給・減額に納得できない場合の対処として、まず就業規則・退職金規程の写しを会社に請求し、不支給の根拠を書面で確認します。次に、退職金請求権を根拠に内容証明郵便で支払いを求めること、応じない場合は労働審判や民事訴訟を提起することが有効です。懲戒解雇の有効性自体を争う手続き(労働審判等)と同時進行で退職金請求を行うことも可能です。また、退職金は雇用保険の受給額には影響しないため、失業給付の手続きと並行して進めることができます。給付金全般の受給可能性については、離職直後に確認することをお勧めします。
懲戒解雇歴は転職活動にどう影響するか
懲戒解雇歴は転職・再就職活動において深刻な影響を及ぼします。多くの企業では採用選考時に「解雇されたことがあるか」を確認するため、懲戒解雇の事実を隠して入社した場合、後から発覚して懲戒処分や解雇の対象となるリスクがあります。一方、刑事罰を伴わない懲戒解雇であれば、履歴書への記載義務は一般に問われないとされています。ただし、「一身上の都合」などと虚偽の理由を記載することは経歴詐称に当たりうるため、記載方法の判断には慎重さが求められます。
懲戒解雇歴が転職に与える具体的なリスク
雇用保険の離職票には離職理由が記載されており、転職先の人事担当者が離職票を確認した際に懲戒解雇であることが判明するケースがあります。また、バックグラウンドチェック(身元調査)が行われる企業・業界では、前職の在籍情報照会により解雇事実が把握される可能性もあります。懲戒解雇後の空白期間が長くなると、説明を求められる場面も増えます。金融・医療・公務員関連など信用が重視される職種では特に影響が大きく、就職の選択肢が狭まるリスクがあります。
懲戒解雇後の再就職に成功した事例のポイント
懲戒解雇後に再就職を果たした事例では、「前職の退職理由を正直に伝えつつ、反省と再発防止策を具体的に説明した」「異業種・異職種への転換でキャリアをリセットした」「資格取得や職業訓練を活用してスキルをアップデートした」といったアプローチが有効だったとされています。ハローワークの就職支援サービスや職業訓練を利用しながら求職活動を進めることで、空白期間を有効活用することも可能です。重責解雇でなく不当解雇として認定されれば、転職活動上の不利益を軽減できる場合もあります。
懲戒解雇後の転職活動を有利に進めるための対処法
懲戒解雇後の転職活動においては、①解雇の有効性を専門家に確認し不当解雇であれば早期に争う、②ハローワークや転職エージェントに正確な状況を伝え適切な求人を紹介してもらう、③職業訓練や資格取得で転職市場における競争力を高める、という3ステップが有効です。また、懲戒解雇後に受給できる失業給付(重責解雇の場合でも要件を満たせば受給可能)を生活費に充てながら、焦らず求職活動を続けることが重要です。給付金の種類・受給条件については当メディアで詳しく解説しているため、あわせてご確認ください。
懲戒解雇と解雇予告手当・有給休暇の扱いはどうなるか
懲戒解雇の場合でも、原則として労働基準法第20条に基づく解雇予告(30日前の通知)または解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)の支払いが必要です。ただし、会社が労働基準監督署の「解雇予告除外認定」を受けた場合は、即時解雇が可能となり解雇予告手当も不要となります。除外認定が認められるのは、「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」であり、横領・傷害などの重大な非違行為が対象です。認定なしに即時解雇を行った場合、解雇予告手当の未払いとして労働基準法違反となります。
解雇予告手当を受け取れない場合のリスク
会社が解雇予告除外認定を受けずに即時解雇を行い、解雇予告手当も支払わなかった場合、労働者は不足分の解雇予告手当を請求できます。会社側が「懲戒解雇だから支払い不要」と誤った運用をするケースは実務上珍しくなく、知識がないまま受け入れてしまうと本来受け取れる手当を失います。また、即時解雇で有給休暇の残日数がある場合、解雇日までに有給を取得する時間的余裕がないことが問題になります。有給休暇は解雇によって消滅するものではなく、解雇日までの期間に取得申請することが可能です。
解雇予告手当・有給を受け取れなかった事例
たとえば、懲戒解雇を通知された当日に即時退社を求められ、残り20日分の有給休暇と解雇予告手当の双方を受け取れなかったケースが報告されています。この場合、会社が解雇予告除外認定を取得していない限り、少なくとも30日分の平均賃金相当の解雇予告手当を請求する権利があります。有給休暇については、解雇通知から実際の解雇日までの期間が30日以上あれば消化できる余地がありますが、即時解雇の場合は買取請求(法的義務はないが任意交渉で可能なケースあり)を検討することも一手です。
解雇予告手当・有給休暇を正当に受け取るための対処法
解雇予告手当が未払いの場合は、まず会社に書面で支払いを請求します。応じない場合は、労働基準監督署への申告または労働審判・民事訴訟で請求できます。有給休暇の残日数がある場合は、解雇通知を受けた後すぐに有給取得の申請を書面で行い、記録を保存することが重要です。なお、解雇予告手当は雇用保険の失業給付には影響しないため、失業給付の手続きと並行して請求できます。懲戒解雇後に受け取れる可能性のある給付・手当の全体像については、当メディアの関連記事をご参照ください。
懲戒解雇と普通解雇・諭旨解雇の違いとは
懲戒解雇と普通解雇は、どちらも会社側が一方的に雇用契約を終了させる点では共通していますが、その性質・手続き・労働者への影響は大きく異なります。普通解雇は「労働者の能力不足・病気・経営上の理由」など懲戒とは無関係の事由による解雇であり、失業保険上は原則として「会社都合」に準ずる扱いとなるケースがあります。一方、懲戒解雇は「制裁」としての性質を持ち、重責解雇として失業給付に不利に働く点が異なります。諭旨解雇は懲戒解雇に次ぐ重い処分で、自ら退職届を提出させる形をとるため失業保険の扱いが異なる場合があります。
懲戒解雇・普通解雇・諭旨解雇を混同するリスク
解雇の種類を誤認したまま対応すると、失業給付・退職金・解雇予告手当の受給可否について誤った判断をしてしまう危険があります。たとえば、会社から「諭旨解雇」と告げられ退職届への署名を求められた場合、これを自己都合退職として処理されると失業給付の給付日数が大幅に不利になります。また、普通解雇と懲戒解雇を混同して「退職金はもらえない」と思い込み請求しないケースも見受けられます。解雇通知書や離職票の「離職事由コード」を必ず確認し、自分の解雇がどの区分に該当するかを正確に把握することが不可欠です。
解雇の種類を誤認して不利益を受けた事例
会社から「諭旨解雇扱いにするので退職届を書いてほしい」と求められた結果、自己都合退職として処理され、本来は会社都合相当として受給できたはずの失業給付を大幅に減らされたケースがあります。また、「懲戒解雇だから退職金はゼロ」と一方的に告知され、退職金規程を確認しないまま受け入れてしまった事例も報告されています。こうした事例では、離職後に専門家へ相談した結果、退職金の一部支給や失業給付日数の修正が認められたケースもあります。
解雇の種類を正確に把握して給付金を守る対処法
解雇通知を受けたら、まず解雇の種類(懲戒解雇・普通解雇・諭旨解雇)を会社に書面で確認し、解雇理由証明書の交付を請求します。離職票を受け取った際は離職事由コードを確認し、「重責解雇」「自己都合」「会社都合」のいずれに分類されているかを把握します。区分に異議がある場合はハローワークの窓口で申し立てが可能です。普通解雇か懲戒解雇かの判断が曖昧な場合は、両方の意思表示を同時に行う「選択的解雇」の問題も生じうるため、早期に専門家へ相談することをお勧めします。当メディアでは離職区分別の給付金受給条件を詳しく解説しています。
懲戒解雇が不当解雇に当たる場合とはどのようなケースか
懲戒解雇が有効となるためには、就業規則上の根拠・客観的合理的理由・社会通念上の相当性・適正手続きの4要件を満たす必要があります。これらのいずれかを欠く場合、懲戒解雇は「不当解雇」として無効と判断される可能性があります。具体的には、就業規則に懲戒解雇の根拠規定がない、解雇事由に対して処分が重すぎる(相当性の欠如)、弁明の機会を与えなかった、証拠が不十分だった、といったケースが挙げられます。不当解雇と認定されれば、雇用契約は継続しているものとみなされ、バックペイの請求が可能になります。
不当解雇を泣き寝入りするリスク
不当解雇であるにもかかわらず、「会社に逆らえない」「証拠がない」「費用がかかる」と思い込んで何も行動しなかった場合、バックペイ(解雇日から復職または和解までの未払い賃金)・退職金・慰謝料という複数の金銭的権利を失います。不当解雇の時効(解雇無効の確認請求権)に関しては、解雇から時間が経過するほど証拠の確保が難しくなります。また、重責解雇認定を受けた状態のまま放置すると、失業給付の給付日数の不利益も回復されないままとなります。「懲戒解雇だから仕方ない」と早計に諦めることは、経済的損失につながります。
不当解雇として認められた裁判例の傾向
裁判例では、「証拠が不十分なまま懲戒解雇を断行した」「弁明の機会を与えなかった」「軽微な就業規則違反に対して解雇は重すぎる」として解雇無効が認められた事例が多数存在します。たとえば、少額の費用の不正流用を理由とした懲戒解雇について、勤続年数・貢献度・反省の態度を考慮したうえで「処分が重すぎる」と判断した裁判例があります。不当解雇が認定された場合、使用者はバックペイの支払いを命じられるほか、和解による解決金支払いで合意に至るケースも多く見られます。
懲戒解雇が不当解雇と思われる場合の対処法
懲戒解雇を受けて不当だと感じた場合の対処の流れは次のとおりです。まず解雇理由証明書を会社に請求し、解雇の根拠を書面で確認します。次に、都道府県労働局のあっせん・労働審判・地方裁判所への地位確認請求訴訟という段階的な解決手段を検討します。費用面が不安な場合は法テラスの法律扶助制度を活用できます。不当解雇が認定されれば、重責解雇の離職区分が会社都合相当に変更され、失業給付の日数・給付制限が改善される可能性もあります。当メディアでは雇用保険給付の受給条件や離職後に活用できる制度を詳しく解説しています。
この用語の監修者
今井一貴
経営と現場の双方に寄り添った支援を行っています。制度を整えるだけでなく、実際に現場で無理なく運用できるかまで見据えた提案を大切にしています。
