妊活ハラスメント [ にんかつはらすめんと ]
用語解説
【妊活ハラスメントとは】
妊活ハラスメントとは、職場で不妊治療や妊活(妊娠に向けた活動)を行う従業員に対し、上司や同僚が心ない言葉をかけたり、制度の利用を阻害したり、退職勧奨などの不利益な取り扱いを行ったりする嫌がらせ行為のことです。
近年では「プレ・マタニティハラスメント(プレ・マタハラ)」とも呼ばれ、パワハラ防止法や男女雇用機会均等法の観点からも深刻な労働問題として扱われています。
妊娠や出産にいたる前の「準備段階」で発生する点が特徴であり、周囲の無理解やプライベートへの過度な介入が背景にあります。
体調不良を「甘え」と決めつけられたり、通院のための休暇申請を不当に制限されたりすることで、当事者が精神的・肉体的に追い詰められ、仕事との両立を断念して自主退職に追い込まれるケースが少なくありません。
企業には適切な相談窓口の設置や、ハラスメント防止に向けた意識改革が強く求められています。
【妊活ハラスメントによる周囲の言葉が与える精神的ストレスと職場環境への影響】
妊活ハラスメントによる心ない言葉が当事者に与える心理的負担
職場で発せられる「子どもはまだか」「妊活は順調か」といったプライベートへの過度な干渉は、不妊治療を進める従業員に極めて強い精神的ストレスを与えます。
悪意のない「親しみ」や「からかい」のつもりであっても、治療が思うようにいかない当事者にとっては、存在自体を否定されたような深い絶望感に繋がります。
他者と比較されることで自己嫌悪に陥り、職場にいること自体が苦痛になるなど、心理的負担は日を追うごとに増大していきます。
さらに、周囲に治療を隠さざるを得ない状況が、一層孤独感を深める悪循環を生み出します。
周異の無理解による職場内の孤立と業務能率の低下
不妊治療に伴うホルモン剤の副作用や体調不良に対し、「自己管理ができていない」「仕事へのやる気がない」といった誤解や陰口が生まれると、当事者は職場内で完全に孤立します。
人間関係が悪化し、周囲への相談や協力を仰ぐことが困難になるため、日常的な業務の進捗や作業能率にも大きな悪影響を及ぼします。
周囲からの冷ややかな視線を気にするあまり、ミスが多発したり、報告・連絡・相談が遅れたりして、チーム全体の生産性も低下していきます。
職場全体の風通しも著しく悪化します。
精神的苦痛によるうつ状態の併発と就業継続の危機
度重なる言葉の暴力や職場の冷ややかな視線に耐え続けると、不眠や激しい不安感、うつ状態などのメンタルヘルス不調を併発するリスクが高まります。
毎日の出社自体が強い恐怖となり、本来は望んでいないにもかかわらず、心身の健康を守るために休職や退職を選択せざるを得ない状況へと追い込まれていきます。
一度メンタルが崩壊してしまうと、回復までに長い時間を要し、キャリアそのものが完全に断絶してしまう重大な危機に直面します。
結果として人生設計そのものが歪められてしまうのです。
職場全体のエンゲージメント低下と組織への不信感
ハラスメントが横行し、それを是正しようとしない職場の空気は、当事者だけでなく周囲の従業員にも伝播します。
「ライフイベントに配慮してくれない会社だ」「明日は我が身かもしれない」という不信感が組織全体に広がることで、他の従業員のモチベーション低下や、優秀な若手・中堅層の連鎖的な離職を招く原因となります。
結果として、企業の文化自体が排他的になり、持続的な成長や新しい挑戦が難しい職場環境へと変質していきます。
組織全体のモラル崩壊に繋がる重大な問題です。
【妊活ハラスメントを理由とした退職勧奨や不利益取扱いに潜む違法性と企業リスク】
解雇や退職勧奨など不当な不利益取扱いの違法性
通院のために有給休暇を申請した際、上司から「仕事とどちらが大事なのか」「周りに迷惑をかけるなら辞めれば」と言い渡される行為は、実質的な不当の退職勧奨に該当します。
不妊治療を理由とした解雇や減給、一方的な降格、不当な評価の引き下げといった不利益取扱いは、労働契約法や男女雇用機会均等法、さらには公序良俗に抵触する可能性が極めて高い違法行為です。
企業側が業務上の必要性を主張しても、裁判では無効とされるケースがほとんどであり、企業側の社会的責任が厳しく追及されます。
パワハラ防止法に基づく企業の安全配慮義務違反リスク
労働施策総合推進法(パワハラ防止法)により、企業は職場におけるハラスメントを防止するための適切な措置を講じる義務を負っています。
妊活中の従業員に対する嫌がらせを認識していながら放置することは、企業が「安全配慮義務」や「良好な職場環境を維持する義務」を怠ったとみなされ、被害者から民事上の不法行為責任や債務不履行責任に基づく損害賠償を請求される法的リスクに直結します。
経営陣が適切な対策を講じない場合、役員個人の賠償責任が問われる発展性も秘めています。
労働基準監督署からの是正勧告と企業名の公表
ハラスメントの被害に遭った従業員が労働局や労働基準監督署、紛争調整委員会に相談し、企業の違法性が認められた場合、行政からの指導や是正勧告の対象となります。
これらを無視したり、形だけの対応で済ませたり、悪質な対応を続けたりした場合には、企業名が社会的に公表される法的措置が取られます。
一度公表されれば、企業のコンプライアンス体制に対する評価は地に落ち、取引先からの信頼も失います。
SNSでの炎上リスクも高まり、経済的な損失を回避することは不可能です。
社会的信用の失墜による採用活動への長期的ダメージ
インターネット上の口コミサイトやSNSで「ハラスメントが原因で不当に辞めさせられた」「妊活を否定するブラック企業だ」という実態が拡散すると、企業の社会的信用は一瞬で失墜します。
特にワークライフバランスや働きやすさを重視する求職者から徹底的に敬遠されるようになり、数年間にわたって優秀な人材を全く確保できなくなるという、会社の存続に関わる致命的な経営リスクを背負うことになります。
業績の悪化だけでなく、既存の優秀な社員まで流出する引き金となり得ます。
【妊活ハラスメントの具体的な裁判例と職場内で起きる典型的な被害事例】
保育士マタハラ・プレマタハラ訴訟における解雇無効の判決例
ライフイベントや妊娠・出産、その準備段階を巡るハラスメントに関する過去の裁判例(保育士マタハラ訴訟など)では、労働者の権利を侵害した企業側の解雇や配置転換を「違法・無効」とする判決が相次いで下されています。
裁判所は、合理的な理由のない人事権の行使や一方的な退職の強要に対し、未払い賃金の支払いや精神的苦痛に対する高額な慰謝料、さらには職場復帰の命令を下し、企業側に厳しい社会的・金銭的責任を求めています。
判例を踏まえ、企業は厳しい処分を覚悟する必要があります。
通院スケジュールの変更を強要する制度利用への嫌がらせ事例
不妊治療(体外受精や人工授精など)は、医師から指定された当日にピンポイントで通院する必要があり、事前に正確な予定を立てにくいという医療上の特性があります。
それにもかかわらず、上司から「平日の急な通院は認めない、休日に予約を取り直せ」「有給ばかり取って身勝手だ」と責め立てられ、治療のための休暇取得を実質的に阻害されるケースが後を絶たず、治療自体の断念を迫られる事態に陥っています。
結果として当事者は、子を持つ選択肢そのものを奪われる深刻な被害を受けます。
治療の副作用による体調不良を「甘え」と決めつける言動事例
ホルモン治療や薬の服用による激しいだるさ、吐き気、精神的な不安定さに対し、周囲のメンバーや管理職から「病気ではないのだから甘えるな」「自己管理がなっていないだけだ」と心ない言葉を浴びせられる事例です。
目に見えにくい不調ゆえに周囲の理解が全く得られず、無理をして出社を続けた結果、心身のバランスを著しく崩してしまい、最終的に通常勤務が不可能な状態まで追い込まれる当事者が続出しています。
治療のステップが進むほどに精神的苦痛も肥大化します。
重要なプロジェクトや基幹業務から不当に外されるキャリア排除事例
「どうせ近いうちに子どもができて長期休暇を取るのだろう」「妊活中なら責任ある仕事は無理だ」という上司の勝手な思い込みから、本人の意思を確認することなく、重要なプロジェクトや責任ある役職から一方的に外される事例です。
キャリアアップの機会を奪われ、雑務ばかりを押し付けられることで職場における自己有用感を失い、精神的に耐えかねて会社都合退職を望まざるを得なくなる要因になります。
個人の可能性を会社が不当に潰す最悪の事例と言えます。
【妊活ハラスメントに直面した際の具体的対応策と給付金を活用した安全な退職手続き】
ハラスメントの事実を客観的に証明するための証拠の記録
職場での心ない発言や嫌がらせに直面した場合、まずは事実関係を客観的に証明できる証拠を揃えることが最優先です。
言動のあった「日時」「場所」「発言者」「具体的な会話内容」を日記やメモに詳細に書き留め、可能であればスマートフォンやICレコーダーでの録音、不当な指示や嫌がらせが記載されたメール・チャットツールの画面をスクリーンショットで確実に保存しておきます。
第三者から見ても一目で被害が伝わるような、具体的で歪みのない客観的なデータを積み重ねることが戦う武器になります。
社内相談窓口や人事部門への申告と社外専門機関の活用
集めた証拠を携えて、社内のハラスメント相談窓口や人事部門、コンプライアンス担当へ正式に状況を伝えます。
もし会社側の対応が不誠実であったり、揉み消しを図ろうとしたりする場合は、各都道府県の労働局にある「総合労働相談コーナー」や弁護士などの社外の公的機関・専門家に相談し、会社に対して行政からの助言や指導、あっせんを求める手続きを進めることが自身の身を守る盾となります。
泣き寝入りせず、外部の専門的な知見を頼ることが解決への近道です。
専門サポートを活用した退職給付金の確実な申請と受給手続き
ハラスメントのストレスから体調を崩し、これ以上は今の会社での就業継続が難しいと判断した場合は、自身の健康と今後の人生を第一に考えて退職を決断することも正当な選択肢です。
退職に際しては、ハラスメントの証拠を提出することで、失業保険(雇用婚)の受給において「特定受給資格者(会社都合退職と同等)」と認められ、給付日数の優遇や給付制限期間なしでの即時受給が可能となります。
経済的な不安を最小限に抑え、次のステップへ進むための大切な制度です。
退職サポートラボによる心身に負担をかけない円滑な離職支援
ハラスメントによって心身ともに疲れ果てている状態で、会社と直接交渉を行ったり、ハラスメントの事実を証明するための複雑な給付金の手続きを一人で進めたりするのは、精神的に大きな負担です。
主要サービスである「退職サポートラボ」では、これら退職時の給付金申請手続きを徹底的にサポートし、当事者が不利益を被ることなく、安心して次の生活や不妊治療に専念できる環境作りを支援します。
プロの力を借りることで、精神的なゆとりを取り戻すことが可能です。
この用語の監修者
今井一貴
経営と現場の双方に寄り添った支援を行っています。制度を整えるだけでなく、実際に現場で無理なく運用できるかまで見据えた提案を大切にしています。
