退職給付金とハローワークの手続き|初めてでも迷わない完全ガイド
給付金・手当
退職を決意した際、多くの人が直面するのが「退職後の生活費」への不安です。特に、勤務先から支払われる「退職金」と、ハローワークで手続きを行う雇用保険の「基本手当(失業手当)」は、混同されやすいものの全く別の制度です。
これらの仕組みを正しく理解し、適切なタイミングで申請を行わなければ、本来受給できるはずの金額が減ったり、受給開始時期が大幅に遅れたりするリスクがあります。
本記事では、退職を検討している方が知っておくべきハローワークでの手続き、受給額の計算方法、そして受給までの具体的なタイムラインを専門的な視点から詳しく解説します。
退職給付金とハローワークの基本|2つのお金の違いを明確化

「退職に伴って支払われるお金」には、大きく分けて2つの種類があります。まずは、それぞれの支払元や目的、手続き場所の違いを正しく整理することが、スムーズな受給の第一歩です。
一般に「退職給付金」という言葉は、勤務先の退職金制度に基づく給付を指すことが多いですが、失業後の生活を支えるメインとなるのはハローワークで扱う雇用保険です。
会社から出る「退職金」とハローワークの「失業手当」の違い
勤務先から支払われる「退職金」は、企業の就業規則や退職金規定に基づき、長年の勤務に対する報いや賃金の後払いとして支給されるものです。一方、ハローワークで手続きを行うのは、雇用保険制度に基づく「基本手当(一般的に失業手当・失業保険と呼ばれるもの)」です。
以下の表に、両者の主な違いをまとめました。
| 項目 | 勤務先からの退職金 | ハローワークの失業手当 |
| 正式名称 | 退職一時金・退職年金など | 雇用保険(基本手当) |
| 支払元 | 勤務していた会社 | 国(ハローワーク/雇用保険) |
| 受給条件 | 各社の退職金規定による | 雇用保険の加入期間や離職理由 |
| 主な目的 | 長年の功労報償・退職後の生活補填 | 失業中の生活保障・再就職の促進 |
| 手続き先 | 会社の総務・人事担当部署 | 住所地を管轄するハローワーク |
ハローワークで貰える「基本手当」の受給条件とは?
ハローワークで失業手当を受け取るためには、単に離職したという事実だけでなく、法令で定められた一定の受給要件を満たしている必要があります。
- 雇用保険の加入期間:原則として、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること。
- 労働の意思と能力:再就職したいという意思があり、いつでも就職できる能力(健康状態や環境)があること。
- 積極的な求職活動:ハローワークで求職の申し込みを行い、仕事を探している状態であること。
病気や怪我、家事に専念するなど、すぐに就職できない状況にある場合は、受給期間の延長手続きなど別の対応が必要になるため注意してください。
【引用元】
ハローワークインターネットサービス:基本手当についてhttps://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
いくら貰える?退職給付金(失業手当)の受給額シミュレーション
次に、実際に受給できる金額の算出方法について解説します。失業手当の額は、退職直前6ヶ月間に支払われた給与(賞与を除く)の合計を180で割った「賃金日額」をベースに計算されます。
この賃金日額に、年齢や賃金の額に応じた給付率(50%〜80%)を乗じたものが、1日あたりの支給額となる「基本手当日額」です。
賃金・勤続年数から給付額を算出するポイント
給付額を正確に把握するためには、以下の要素を確認する必要があります。
- 賃金日額の確認:残業代や通勤手当を含む、税引き前の額面給与を計算します。
- 基本手当日額の決定:賃金日額が低いほど給付率は高くなり、賃金日額が高いほど給付率は低くなります。また、年齢区分ごとに1日あたりの上限額が定められています。
- 所定給付日数の決定:離職時の年齢、雇用保険の被保険者期間、および離職理由によって、90日から最大360日(障害者等の就職困難者の場合)の間で決まります。
例えば、月給30万円(賃金日額10,000円)の場合、基本手当日額は概ね5,000円〜8,000円の範囲となり、所定給付日数が90日であれば、総受給額は45万円〜72万円程度となります。
「自己都合」と「会社都合」で給付日数には大きな差が出る
退職の理由が、自発的な意思による「自己都合」か、倒産・解雇・特定のハラスメント等による「会社都合(特定受給資格者)」かによって、給付の厚遇度が大きく変わります。
以下の表は、被保険者期間に応じた一般的な所定給付日数の比較です。
| 被保険者期間 | 自己都合(一般離職者) | 会社都合(特定受給資格者等) |
| 1年以上5年未満 | 90日 | 90日〜150日 |
| 5年以上10年未満 | 90日 | 180日〜240日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | 210日〜270日 |
| 20年以上 | 150日 | 240日〜330日 |
※年齢によって細かく変動します。
会社都合と認定された場合は、自己都合に比べて受給開始が早く、かつ給付日数も長くなる傾向にあります。自身の離職理由が客観的にどう判断されるかは、ハローワークでの実態確認が重要です。
【引用元】
厚生労働省:雇用保険の基本手当の所定給付日数
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135026.html
いつ振り込まれる?申請から受給までの4つのタイムライン
ハローワークで手続きをしたからといって、すぐに入金されるわけではありません。特に自己都合退職の場合は「給付制限」という期間が設けられており、最初の入金までに数ヶ月の空白期間が生じることを覚悟しておく必要があります。
以下に、手続きから受給までの標準的な流れを整理しました。
自己都合退職に適用される「2ヶ月」の給付制限期間とは
自己都合で退職した場合、以下の期間を経てから受給が開始されます。
- 待機期間(7日間):離職理由を問わず、すべての受給者に適用される「手当が支給されない期間」です。
- 給付制限期間(2ヶ月):正当な理由のない自己都合退職や、自身の責任による解雇の場合に適用されます。
以前は3ヶ月でしたが、現在は法改正により「5年間に2回まで」は2ヶ月に短縮されています。この期間は失業手当が支給されないため、その間の生活費をあらかじめ確保しておくことが不可欠です。
初回の振込が行われるまでの具体的なスケジュール
申請から初回の振込が行われるまでの一般的なタイムラインは以下の通りです。
- 受給資格の決定(初回来所):ハローワークに離職票を提出し、求職申し込みを行います。
- 雇用保険説明会:制度の解説を受け、「雇用保険受給資格者証」などが交付されます。
- 第1回失業認定日:申請から約4週間後。この日までに一定の求職活動実績が必要です。
- 給付制限明けの認定日:自己都合の場合、制限期間終了後の最初の認定日にようやく数ヶ月分の手当がまとめて確定し、その数日後に銀行口座へ振り込まれます。
最短でも、ハローワークに最初に行ってから3ヶ月程度はまとまった入金がないと想定して計画を立てるべきです。
【引用元】
ハローワークインターネットサービス:雇用保険の受給の流れhttps://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_procedure.html
ハローワークへ行く前に!揃えておくべき5つの必要書類

ハローワークの窓口は混雑することが多く、書類に不備があると何度も足を運ぶことになり、受給が遅れる原因となります。必要な持ち物を事前にチェックし、漏れがないように準備しましょう。
提出が必要な書類は、主に会社から送られてくるものと、自身で用意するものに分けられます。
会社から必ず受け取るべき「離職票」のチェックポイント
退職後、通常10日〜2週間程度で元勤務先から「雇用保険被保険者離職票」が届きます。これには「離職票ー1」と「離職票ー2」の2種類があります。
- 離職票ー1:基本手当の振込先金融機関などを記入します。
- 離職票ー2:直近6ヶ月の賃金実績や、離職理由が詳細に記載されています。
- 重要:離職理由の記載内容に異議がある場合は、署名欄のチェックを入れることで、ハローワークに再審査を申し出ることができます。
自分で用意する「マイナンバー」や「本人確認書類」のリスト
離職票に加えて、以下の4点を必ず持参してください。
- 個人番号確認書類:マイナンバーカード、または通知カード。
- 身元確認書類:運転免許証、マイナンバーカード(写真付き)など。
- 写真2枚:最近撮影したもの(正面上半身、タテ3.0cm×ヨコ2.4cm)。※現在はマイナンバーカードの提示で省略できる場合もあります。
- 本人名義の預金通帳・キャッシュカード:基本手当の振込先となるもの。
【引用元】
厚生労働省:雇用保険の受給手続きhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/index_00003.html
損をしないために知っておきたい3つのメリットと裏技
失業手当は、単に受け取るだけではなく、再就職を促進するための様々な支援制度と組み合わされています。これらを活用することで、手当の受給期間を延ばしたり、再就職時の一時金を受け取ったりすることが可能です。
特に「次の仕事に役立つスキルを身につけたい」と考える方には、職業訓練の活用を強く推奨します。
「職業訓練」を検討して給付期間を延長する方法
ハローワークが実施する「公共職業訓練」を受講する場合、一定の要件を満たせば「訓練延長給付」を受けることができます。
- 給付制限の解除:自己都合退職であっても、訓練が開始されれば給付制限がなくなり、すぐに手当が支給されます。
- 受給期間の延長:本来の給付日数が終了しても、訓練期間が終わるまで手当の支給が継続されます。
- 追加の手当:受講手当や通所手当(交通費)が支給される場合もあります。
生活を安定させながら無料でスキルアップができるため、キャリアチェンジを目指す方には非常に強力なサポートとなります。
早く決まれば貰える「再就職手当」で賢く転職するコツ
「手当を全日数もらわないと損」という考え方は間違いです。早期に再就職が決定した場合、残りの給付日数に応じた「再就職手当」を受け取ることができます。
- 支給額:残りの日数が3分の2以上あれば残日数の70%、3分の1以上あれば60%相当額が一括で支給されます。
- メリット:早く就職することで「新しい職場での給与」と「まとまった再就職手当」を同時に得られるため、経済的なメリットが非常に大きくなります。
【引用元】
厚生労働省:再就職手当のご案内
https://jsite.mhlw.go.jp/nara-roudoukyoku/content/contents/002403813.pdf
まとめ:事前準備を整えて安心してハローワークへ向かおう
退職後の生活を支える給付金の手続きは、一見複雑ですが、仕組みを正しく知ることで不安を大幅に軽減できます。
まずは会社からの「退職金」と雇用保険の「基本手当」の違いを理解し、離職票が届いたら速やかにハローワークへ向かいましょう。自己都合退職の場合は受給開始まで約3ヶ月の期間が必要ですが、職業訓練や再就職手当といった制度を賢く利用することで、金銭的なリスクを抑えながら前向きな転職活動が可能になります。
各書類の準備とスケジュール管理を徹底し、次のキャリアに向けた確かな土台を築いてください。
退職サポートラボなら
退職・離職時に受け取れる給付金・手当申請方法が分かる!
