ハラスメントを会社が対応してくれない?解決への5ステップを解説
仕事辞め方
職場でのハラスメントに悩み、勇気を出して相談したにもかかわらず、「会社が動いてくれない」「真面目に取り合ってもらえない」という状況は、被害者にとって二重の苦しみとなります。しかし、ハラスメントの放置は、単なる社内のコミュニケーション不足ではなく、会社側の明確な「法的義務違反」となる可能性があります。
本記事では、ハラスメント被害に対して会社が負うべき義務、客観的に被害を証明するためのポイント、そして会社が動かない場合に取るべき具体的なアクションを専門的な視点から詳しく解説します。現状を打破し、あなたの心身の安全と適切な就業環境を取り戻すためのガイドとして、ぜひ最後までお読みください。
会社はハラスメントへの対応義務がある?放置が許されない3つの理由
職場でハラスメントが発生した際、会社には「単なる相談窓口の設置」以上の重い責任が課せられています。多くの企業で対応が後回しにされがちですが、法律上、放置は明確なリスクとなります。
会社がハラスメント対応を怠ってはならない主な理由は、以下の3点に集約されます。
1.2022年4月から全企業に課された「防止措置義務」とは
労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)の改正により、2022年4月から中小企業を含むすべての企業に対し、パワーハラスメント防止のための措置を講じることが義務付けられました。
この法律に基づき、企業は以下の措置を講じる必要があります。
- 事業主の方針の明確化およびその周知・啓発(ハラスメントを許さない姿勢の提示)
- 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(窓口の設置と適切な運用)
- 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応(事実確認と被害者・加害者への措置)
つまり、相談があったにもかかわらず事実確認を行わない、あるいは放置することは、この法的義務を放棄していることと同義です。
2.会社が負う「安全配慮義務」と放置による契約違反の可能性
ハラスメント防止法以外にも、会社には「安全配慮義務」という重大な責任があります。これは労働契約法第5条に定められたもので、「労働者が心身の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務」を指します。
ハラスメントの被害を知りながら会社が適切な措置をとらず、その結果として被害者がメンタルヘルス不調に陥ったり、退職を余儀なくされたりした場合、会社は安全配慮義務を怠ったとして、債務不履行(契約違反)に基づく損害賠償責任を問われる可能性があります。
3.被害者への不利益な取り扱いは法律で厳格に禁止されている
ハラスメントを相談したこと、あるいは事実確認に協力したことを理由に、解雇、降格、減給などの不利益な取り扱いをすることは法律で固く禁じられています。
「相談したらもっと居づらくなるのではないか」という不安を抱く方は少なくありませんが、会社が相談を理由に報復的な人事を行うことは、それ自体が新たな違法行為となります。
【引用元】
職場におけるハラスメント対策(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
あなたの被害は法的基準を満たすか?客観的に判断するための3要素
会社に「これはハラスメントである」と認めさせ、改善を促すためには、個人の主観だけでなく「法的・客観的な基準」に照らし合わせる必要があります。
厚生労働省の指針では、以下の3つの要素をすべて満たすものがパワーハラスメントと定義されています。
1.優越的な関係を背景とした言動(職務上の地位や人間関係)
「優越的な関係」とは、単なる上司から部下への指示だけを指すのではありません。抵抗や拒絶が困難な状況であれば、同僚間や部下から上司への言動であっても含まれます。
- 職務上の地位:上司と部下、役員と従業員など
- 人間関係の優位性:ベテラン社員と新人、特定の派閥による孤立化など
- 専門知識・スキルの優位性:特定の業務に詳しく、その人の協力がないと仕事が進まない状況など
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた指導・言動
業務上の指導であればすべてが許されるわけではありません。社会通念上、明らかに業務の目的を逸脱している場合や、手段が不適切である場合はハラスメントとみなされます。
| 項目 | 業務上の適切な指導 | パワーハラスメント |
| 目的 | 業務の遂行、ミスの改善 | 人格の否定、攻撃、嫌がらせ |
| 態様 | 相手の理解を促す言葉選び | 大声での罵倒、執拗な叱責 |
| 頻度・場所 | 必要最小限、適切な場所 | 公衆の面前での晒し上げ、連日の叱責 |
3.労働者の就業環境が害されるほどの精神的・身体的苦痛
その言動により、被害者が精神的、あるいは身体的に苦痛を感じ、働く上で見過ごせない程度の支障が生じている状態を指します。基準となるのは「平均的な労働者の感じ方」です。
例えば、一度の些細な指摘ではなく、継続的な無視、過大な仕事の押し付け、あるいは過小な(誰にでもできる)仕事しか与えないといった行為が、働く意欲や環境を損なっているかどうかが判断材料となります。
【引用元】
ハラスメントの定義(厚生労働省「あかるい職場応援団」)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about
「対応してくれない」会社を動かすために準備すべき3つの証拠

会社に相談しても「言った言わないの水掛け論」で片付けられたり、「気のせいではないか」と一蹴されたりする場合、圧倒的に不足しているのが「客観的な証拠」です。
会社を動かし、法的義務を果たさせるためには、以下の3種類の証拠を揃えることが極めて重要です。
1.言動の記録:日時・場所・内容を詳細に記した日記やメモ
特別な道具がなくても今すぐ始められるのが「記録」です。ハラスメントの内容を、できるだけ具体的に、かつ継続的に書き留めます。
- いつ(日時):何月何日、何時ごろか。
- どこで(場所):会議室、自席、飲み会の席など。
- 誰が(加害者):特定の人物の名前。
- 何を(内容):言われた言葉を「」で書き、された行為を具体的に記す。
- その時の状況:周囲に誰がいたか、自分の心境はどうだったか。
デジタルツール(スマホのメモアプリ)でも構いませんが、手書きの日記は「後から改ざんしにくい」として証拠能力が高く評価される傾向にあります。
2.音声・データの保存:録音データやメール、チャットの履歴
現代のハラスメント対策において、最も強力な証拠となるのが音声データやデジタルテキストです。
- 録音データ:ICレコーダーやスマホの録音機能を使用します。「秘密録音」であっても、ハラスメントの被害申告という正当な目的があれば、証拠として認められるケースがほとんどです。
- メール・チャット:嫌がらせの内容が含まれるメールや、業務時間外の執拗な連絡などは、スクリーンショットを撮るか、PDFとして保存しておきます。
3.第三者の証言と医師の診断書:客観的な被害の証明
自分一人の力だけでなく、周囲の協力や専門家の意見を仰ぐことも有効です。
- 第三者の証言:現場を見ていた同僚がいれば、証言を依頼できる可能性があります。ただし、同僚も会社での立場があるため、無理強いは禁物です。
- 医師の診断書:ハラスメントによるストレスで眠れない、食欲がない、動悸がするといった症状がある場合は、心療内科等を受診し、診断書を作成してもらいましょう。「職場でのストレスが原因」と記載されることで、被害の重大性が客観的に証明されます。
【引用元】
相談窓口の重要性と証拠の集め方(厚生労働省)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
会社に「本気度」を伝えるための具体的なアクション

口頭で「困っています」と伝えるだけでは、会社が深刻に受け止めてくれない場合があります。そのようなときは、よりフォーマルな形式で「本気度」を示す必要があります。
以下のステップを踏むことで、会社に対して「放置すれば法的リスクがある」ことを認識させることができます。
1.社内のコンプライアンス窓口へ「書面」で再相談する
一度相談してダメだった場合でも、次は「書面(被害申告書)」を作成して提出しましょう。口頭での相談は記録に残らないことが多いですが、書面で提出されたものは会社として無視することが困難になります。
提出の際は、コピーを手元に残し、いつ誰に渡したかを記録しておきます。内容には「これまでに相談したが改善が見られないこと」と「速やかな調査と是正を求めること」を明記します。
2.労働組合(ユニオン)を通じて団体交渉を申し入れる
社内に信頼できる労働組合がある場合や、社外の「個人でも加入できる労働組合(ユニオン)」に相談するのも一つの手です。
労働組合には、会社と対等に話し合う「団体交渉権」があります。個人で訴えるよりも大きな圧力がかかり、会社側も誠実に対応せざるを得ない状況を作ることができます。
3.内容証明郵便を用いた通知で会社の責任を問う
会社が依然として対応を拒む場合、弁護士などを通じて「内容証明郵便」を送り、ハラスメントの是正を求める通知を行う方法があります。
内容証明郵便は、「誰が、いつ、どのような内容の文書を、誰に送ったか」を郵便局が公的に証明するものです。これを用いることで、会社側に「これ以上放置すれば法的措置(裁判など)に踏み切る用意がある」という強い警告を与えることができます。
社内で解決しない場合の「外部相談窓口」活用ガイド
社内の努力だけでは限界がある場合、公的機関や専門家の力を借りるのが最善の策です。自分だけで抱え込む必要はありません。
主な外部相談窓口とその役割を整理しました。
1.都道府県労働局:個別労働紛争解決制度による助言・指導
各都道府県にある労働局には「総合労働相談コーナー」が設置されています。ここではハラスメントに関する相談を無料で受け付けており、必要に応じて労働局長による「助言・指導」や、第三者を交えた話し合いによる解決を図る「あっせん」制度を利用できます。
会社に対して行政から働きかけを行ってもらえるため、解決に向けた大きな推進力となります。
2.労働基準監督署:法令違反が疑われる場合の通報先
ハラスメントそのものの取り締まりは難しい場合がありますが、ハラスメントに伴う「残業代未払い」や「不当な解雇」など、労働基準法違反が明確な場合は労働基準監督署が動きます。
また、ハラスメント対策としての措置(窓口設置など)を全く講じていない企業については、労働基準監督署ではなく、労働局の雇用環境・均等部(室)が担当となります。
3.弁護士:損害賠償請求や法的措置を検討する場合の専門家
会社に対して慰謝料を請求したい、あるいは退職交渉を有利に進めたい、刑事告訴(暴行や名誉毀損など)を検討したいといった場合は、弁護士の出番です。
費用はかかりますが、あなたの代理人として直接会社と交渉してくれるため、精神的な負担を大幅に軽減できます。法テラスなどを利用すれば、費用を抑えて相談することも可能です。
【引用元】
あかるい職場応援団(厚生労働省)|相談窓口のご案内
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/inquiry-counter
まとめ:ハラスメント放置は会社の義務違反。一人で悩まず外部の力を借りよう
職場でのハラスメントを会社が対応してくれない状況は、法律に照らせば「会社側の義務違反」に該当する可能性が高い重大な事態です。
- 会社には防止措置義務と安全配慮義務がある
- 被害を証明するための客観的な証拠(記録・音声・診断書)を揃える
- 書面での再相談や労働組合の活用で本気度を伝える
- 解決しない場合は労働局や弁護士などの外部機関を頼る
これらのステップを踏むことで、停滞していた状況を動かすことができます。最も大切なのは、あなた自身の心身の健康です。今の環境が耐え難いものであるならば、自分を責めるのではなく、適切な窓口へ一歩踏み出してみてください。法と社会は、声を上げたあなたを守るために存在しています。
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